ろくろの「うまさ」とは何か|磁器ロクロにおける精度と技術の本質

ろくろのうまさについては、以前どこかで書いた気がする。
それでもまた、頭の中で同じテーマが回り始めたので、あらためて整理してみる。

 

そもそも、ろくろが「うまい」とは何だろうか。

 

作りたい造形に対して、最適な技術をコントロールできること。
そして、どんな形を挽いても、そこに自分のラインが立ち上がること。

図面通り、寸分違わず作る技術。
揺らぎや柔らかさをあえて生む、いわゆるヘタウマの技術。

どちらも「うまさ」だと思っている。

 

つまり、技術を選べること。
自由に使い分けられること。

それが、ろくろのうまさだ。

 

今回はその中でも、完璧に揃えるための磁器ロクロ技術に話を絞りたい。

 

誰だって、一点だけなら何とかなる。
気合と勢いで、それなりの形にはなる。

 

だが、全く同じ形、同じ厚みの器を、数多く一気に作るとなると話は別だ。

ここは感覚では成立しない。
技術と知識がなければ揃わない世界だ。

 

言っておくが、これは磁器ロクロの話である。

例えば、直径15cm・高さ5cmの鉢を量産するとする。

 

最初の成形では、直径と見込みの深さを揃える。
次に削りで高さを揃え、高台の直径を揃え、口元から高台までのラインを整える。

ここまでは、多くの経験者が想像できるだろう。

 

前提として、均一な厚みで挽ける技術は持っているものとする。
(これが一番難しいのだが。。。)

 

だが本当に重要なのは、ここから先の話だ。

これは、プロの陶芸家でも見落としている人が少なくない。

 

形を作る工程では、まず均一に伸ばし、
内ヘラを使い、ロクロの遠心力で内側から外へ広げていく。

 

理想は、フォルムを整えながら、ぴたりと直径15cmで止めること。

言うのは簡単だが、実際は難しい。

 

ほんの少し広げすぎて、15.1cmになることもある。
たった1ミリ。だが、この1ミリが後々効いてくる。

その場合、外から圧をかけて15cmに戻す。
定規の数字は同じ15cmになる。

 

しかし、ここに決定的な違いが生まれる。

 

同じ15cmでも、
どうやってその15cmに辿り着いたかで、結果は変わるのだ。

 

その差は、乾燥や焼成の過程で必ず現れる。

内側から広げて止めたのか、
一度広げすぎてから戻したのか。

 

土は、その履歴を正直に記憶している。

 

以前、私の知るろくろの名人がいた。
一日で約800個の飯碗を挽く人だ。

最初に聞いたときは、数字を疑った。

 

だが実際は、単に速いわけではない。
速さだけなら、途中で必ず崩れる。

その人の特徴は、一言で言えば無駄が一切ないことだった。

 

工程が少なく、迷いがない。

 

それは勘ではなく、各工程で押さえるべきポイントを完全に理解しているからだ。

 

無駄に広げたり、戻したりはしない。
最短の工数で、狙った形に揃えていく。

だからこそ、800個すべてが同じ立ち上がりで、同じ落ち方になる。

 

高度なロクロ技術とは、速さではない。

作業中に何を考えているか。
どんな知識と経験をもとに手を動かしているか。

その積み重ねが、技術になる。

 

そんなことを言いながら、
自分もそこに到達している!と自慢したいところだが、

正直に言えば、そんな人は有田にはゴロゴロいる。

 

表に出ることは少ないし、目に見えるものでもない。

だが、そうした判断の積み重ね、
一手先を読む操作、
数ミリの差を身体で覚えた技術が、
有田の陶芸を静かに支えてきた。

 

 

そしてそれこそが、
有田の磁器が世界に知られてきた理由の一つなのだと思う。

 

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コメント: 2
  • #1

    chachacha (水曜日, 01 4月 2026 09:03)

    前に有田の窯元巡りをしたことがありますが、有田では岳窯さんが1番ロクロが上手いと思います。

  • #2

    庄村 (水曜日, 01 4月 2026 11:56)

    chachacha 様 
    コメントありがとうございます。
    岳窯の照井先生ですね。 おっしゃる通りとても上手な方です!