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陶芸の絵付けの方法はいろいろある

色絵岩梅牡丹孔雀大皿:晩香窯の初代である庄村健吉が手掛けた大皿。大正初期の作品で、当時ではとても珍しかったピンクの色絵を使っている。ピンクを発色するために金を使っていた。皿の直径は約80cmの大きさでろくろ職人による匠の技です。
                                              晩香窯創業者である庄村健吉が作った『色絵岩梅牡丹孔雀大皿』

晩香窯の自宅玄関に飾ってある大皿。

 

これは、大正初期(1912~1916)に作られた大皿で、晩香窯の創業者、庄村健吉が手掛けた作品です。

 

当時、同じような大皿を4点焼き上げたそうで、3点はヨーロッパへ渡り、残ったこの1点は今もなお、

 

晩香窯の守り神として飾られています。 実は、大皿の右上部分が割れていて金継ぎがされています。

 

割れてしまったから出荷できなかったというわけなのです。

 

当時は大作だった故にとても残念だったんだろうが、私としては、とても貴重な作品が、

 

家に残ってくれたことにとても感謝している。

 

 

作品名:『色絵岩梅牡丹孔雀大皿』

 

 

いわゆる、色絵の作品である。

 

色絵というのは、釉薬をかけて焼いたもの、白磁の状態に焼き上げ、その上から絵付けをする方法。

 

釉薬の上に絵付けするので上絵ともいいます。

 

また、釉薬の下(釉薬をかける前)に絵付けをする方法を下絵といいます。

 

陶芸において、また有田において、この色絵とは誰もが知っているメジャーな技法でしょう。

 

余談だが、この作品にあるピンク色は、当時とても斬新だったようです。

 

そして、ピンク色を出すために、金(お金ではないです)を使っているそうです。

 

この大皿の直径は約80cm。どれだけの量の金をつかっているのだろうか・・。

 

しかも、この大皿は、当時の有名職人のろくろ引きです。

 

どれだけの高度なろくろ技術を持った職人なのだろうか・・・・。

 

そんな作品です。

 

そしてこの大皿は、これからも晩香窯の大看板として静かに庄村家を見守っています。

 

初代から4代までは、このように陶芸作品として絵付けされたものがメインでした。

 

現在、5代目である庄村健は、4代目までとは違い陶芸作家として活動しています。

 

代表的な表現として、『藍染』、『紅染』、最近では『卵白釉瓷』といった作品があり、

 

これが庄村健の作風だとみなさまに認知されている。

 

しかしながら、それ以外の作品も手掛けています。

 

それが絵付けの作品です。

 

絵付けの方法はいろいろとあることを記しましたが、

 

現在の晩香窯での絵付けの方法は下絵けです。

 

しかしながら、普通の下絵付けではありません。

 

陶芸の絵付けにはいろいろと方法があります。

 

晩香窯における方法とは、最初に彫りを施し、素焼(釉薬をかける前に一度950℃で焼くこと)をし、

 

その彫った上に絵付けをしています。

 

麦文皿:麦の彫りを施し、その上に絵付けをして焼いた皿。晩香窯の絵付けはこの方法で行っています。
                                  彫りを施した上に絵付けをした作品:麦

 

上の画像は庄村健の作品で、麦をモチーフに絵付けした作品です。

 

よく見るとわかると思いますが、絵付けの筆さばきだけでは

 

決して表現できないシャープな感じがあると思います。

 

露草文の作品:彫りを施した上に絵付けをする方法で作った作品。
                                  彫りを施した上に絵付けした作品:露草

 

こちらは違うデザインの絵付けです。

 

青色は呉須と呼ばれている下絵具での下絵付。一般的には「染付」とも言いますが、

 

染付による絵付けとはまた異なる青のグラデーションの美しさがあります。

 

カラスノエンドウの作品:彫りを施した上に絵付けをした作品。釉薬もいろいろとあるので、選択次第ではまた違った絵付けの表現ができます。
                             彫りを施した上に絵付けした作品:カラスノエンドウ

 

こちらの彫りは前の画像とは彫る方法が異なります。

 

彫る方法が違えば、その上に絵付けをしても表情が変わってきます。

 

そして、表現したいイメージがあり、そのイメージに合わせて釉薬を変化させることで

 

さらに絵付けの表情に変化があらわれます。

 

こちらの彫りは鉛筆で書いたように彫る方法で、彫った溝に青色がくっきりと表れています。

 

さらに、上にかける釉薬の流れとともに、絵付けの色が滲んで流れています。

 

これも陶芸における絵付けの表現方法です。

 

ということで、

 

単純に、絵付けといってもいろいろな方法があるのです。

 

何もないフラットなお皿に筆さばきだけで絵付けをする方法、

 

彫ってその上に絵付けをしていく方法。

 

晩香窯でも、絵付けする際に使うものは筆ですが、

 

そもそも筆なんか使わず、スポンジで点描画みたいに絵付けしていくこともありでしょう。

 

陶芸における絵付けの手段、方法はいろいろとあります。

 

不正解なんてありません。

 

それが陶芸家の仕事だと思っています。

 

明治17年に晩香窯が創業し、色絵の絵付け品をメインとして活動していました。

 

そして、五代目となり、個人の陶芸作家となり、自身の作風も確立しつつも、

 

晩香窯の原点となる絵付けも並行して制作しています。

 

このブログを担当しています晩香窯6代目、私こと庄村久喜。

 

私自身、シルクのような光沢感をもつオリジナル白磁、『白妙磁』を柱として

 

個人活動をしています。

 

しかしながら、

 

晩香窯6代目として、父である5代目が始めた彫りの上に絵付けをする方法も

 

継承していけたらと考えています。

 

白妙磁の世界とは全く違う世界にはなるかと思いますが、

 

ここだけの話、絵付けをすることに楽しみもあります。

 

A面である個人作家としての一面と、

 

B面である晩香窯の6代目としての一面が、

 

いつの日か、みなさまにお見せできたら幸いです。

 

 

・・・

 

 

次回のブログは・・

 

ろくろ成形の上手さについて書きたいと思っています。

 

投稿する日は未定ですがお楽しみに。