· 

ろくろ技術のテクニックと『うまさ』を思考する

ろくろを使って作る:ろくろ技術があれば、同じサイズまた、多くの数をつくることができる。
                                          ろくろを使って同じサイズの器を作る

「磁器のろくろって難しい・・・」

 

よく聞くフレーズです。

 

そうですね、難しいですよ。

 

陶器だろうが磁器だろうが、ろくろは難しい。

 

だけど、磁器作りの方がさらに難しいですよ。

 

陶土に比べて磁土は粘り気が少ないので、

 

ろくろ技術がないと伸びないし分厚いものしか作れない。

 

粘り気が少ないのでろくろ技術がないと乾燥工程で割れやすい。

 

そんなところがよく聞く原因だろうか。

 

『ろくろがうまくなるテクニックはありませんか?』

 

テクニックはあります。

 

例えば、

 

磁器ろくろでは、粘り気が少ない土に対し牛ベラなどの道具を使うことで

 

手早く均一の厚さをだせます。

 

この牛ベラたちを使うことで数多くのものを同じサイズでつくることができ、とても大きな作品も均一の厚さで作ることも可能
     晩香窯でいつも使っている牛ベラたち:とても大事な道具なので、壊れたらパテで修理して使い続けています。

 

牛ベラの種類はさまざまありますが、晩香窯においては、庄村健、庄村久喜ともども、4種類の牛ベラを使い分けています。

 

一番右は、大きな作品(公募展などの作品から壺や花瓶など)を作る際に使うもの。

 

底の直径の大きさに合わせて大小使い分けています。

 

中央の牛ベラはオールマイティなもの。ごはん茶碗のような形状のものから、お皿、カップなど、

 

なんでも使えます。これには横幅が大小あって器の大きさによって使い分けている方もいらっしゃいますが、

 

私はこれで十分です。

 

左の牛ベラは、中央のものと似ているようですが先端が異なります。

 

これは、底がフラットな湯呑やそば猪口などを作るときに使います。

 

庄村久喜が作る大きな作品:専用の道具を使うことで、均一で薄く延ばすことが可能。ろくろ技術を高めるためには良い道具をそろえることが大事。
                       ろくろで作った大きな作品:牛ベラを含め、4つの道具を使いました。

 

私(庄村久喜)が作った大きな鉢。

 

牛ベラを使い、土の厚みを均一化させています。それと同時に土をギュッとしめています。

 

土をしめるというのは圧力を加えるということで、

 

形が崩れにくくなったり、乾燥後の割れ防止でもあります。

 

また、手前にある押しヘラ3点は、内側から押しあてながら使うもので、作りたい形に整える道具です。

 

鉢の場合、横へ広がっていきますので、この押しベラを使って整える際にも土が薄くなっていきます。

 

最終的にどれだけの薄さで仕上げるかを考えながら作っていくことが大事です。

 

ちなみに、この作品は厚みがほぼ均一で、5ミリ~7ミリ程度でしょうか。

 

乾燥後にアウトラインを整え削るので、さらに薄くなることを想定して作っています。

 

こういった道具を使うことでうまくろくろが使えるのですが

 

うまくなるための方法・・ではないですよね。

 

結論から言います。

 

うまくなるためには、『数をこなすこと!』 それだけです。

 

有田は磁器の町です。

 

ろくろがうまい職人、陶芸家はたくさんいらっしゃいます。

 

うまい人が多いので細かなアドバイスは簡単にうかがえます。

 

有田で修業すれば、もれなく誰もがろくろがうまくなります。

 

しかしながらそのアドバイスは

 

うまくなるための時間短縮になるというだけで、

 

アドバイスを受けたら急にうまくなるということではないです。

 

一番重要なことは、

 

アドバイスではなく『数をこなすこと』だからです。

 

例えば、

 

子供のころに自転車を乗るための練習をした方も多いと思います。

 

何回も転倒し痛いおもいをした経験がありますよね。

 

それでも何度も繰り返すことで、何が原因かわからないけど、

 

突然乗れるようになる。

 

ろくろも全く同じです。

 

数をこなすことで、突然うまく使いこなせるようになるのです。

 

当然、うまくなるためにかかる時間の個人差はあります。

 

だけど、数をこなせば最終的ににうまくなりますよ。

 

・・・・

 

ろくろ技術のテクニックのことでお話ししましたが、

 

あくまで、有田の磁器ろくろにおける技術のはなしです。

 

一般的に粘り気があり、扱いやすい陶器の土ですが、

 

種類によっては、小粒の石が混ざってバランスがとり辛い陶土などもありますし、

 

思考のベクトルが異なれば磁器よりも難しいとも言えます。

 

また、磁器土によっても粘り気がある土もあります。

 

有田の磁器土は、天草磁石単体で作られた粘土ですが、

 

他産地には、粘り気がある他の原料を混ぜた配合磁器粘土を

 

使っている場合もあります。

 

焼き上がりの白さには、さほど変わりはないですが、

 

焼く温度の限界値が低かったと思います(詳しくはわかりませんが。)

 

・・・

 

詳しく思考していくと、話が広がりすぎて、まとまらなくなりますので、

 

ここでは、

 

有田の磁器土における有田のろくろ技術のテクニック、うまさに絞っての

 

お話ということで。

 

・・・

 

話が長くなりそうなので、

 

タイトル『ろくろ技術のテクニックと『うまさ』を思考する』でしたが、

 

次回のブログで、ろくろの『うまさ』について話ができたらと思います。