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音楽のつもりが、ロクロに心乱される午後

作陶中に音楽を流すのが好きで、最近はもっぱらYouTube頼りな僕、改め私。最近よく聴く音楽は、

ピアノソロのやつだったり、メタルだったり、あと、メタルだったり。。

 

ところが、曲に浸っていると時折、音楽の世界をぶった切るように広告が入ってくる。

まぁ、そこはしょうがない…と思っていたけれど、やたらと流れてくる広告が気になってしょうがない。

 

それは、見知らぬ誰かがロクロを回して作品を作る映像。

なにこれ、海外の陶芸家?と思いつつ、ついに我慢できずチャンネルに飛んでしまった。

 

なるほど、いわゆる「how to」系の陶芸動画らしい。

茶色い粘土がロクロの上でにゅ〜んと気持ちよく伸びていく様子は見ていてちょっと快感。でも、心の中では思わずこうつぶやいてしまった。

 

そんなにスルスルと簡単にのびていいなぁ・・

 

いやいや、私の使っている磁器粘土、そんなに素直じゃないよ。。
有田で扱う磁器粘土は、粘りがない、言わば、思春期の気難しい相手。

ちょっとでも気を抜けば、すぐに反抗してくる。これを均一に、薄く、美しく引き上げようと思ったら専門的な技術が必須なのだ。

つまり、有田でロクロを学ぶというのは、“粘りのない磁器粘土”という難物を手なずけるための修行のようなもの。

しかもその技術、世界的に見てもトップクラス。泉山や天草といった混ぜものなしで磁器になる特別な粘土をなんとか形にするために、

先人たちが血と汗と土と酒にまみれて培ってきたわけです。(※酒のみはロクロがうまくなるという都市伝説を聞いたことある・・しらんけど。。)

 

他にも磁器の原料となる石は日本中にあるけれど、多くは他の粘土をブレンドしないと使えない。

そうすると、粘りが出て扱いやすくはなるけれど、純粋な磁器とはまた違った味わいに。

まぁ、それはそれで良し。作品に応じて素材を選べばいい。

 

でも、ふと思い出したんです。昔、ある陶芸雑誌に載っていた特集タイトル。

磁器って簡単!

……いやいや、それ、たぶんブレンド磁器とか配合磁土でしょ!?
配合磁器とは、成分を調べてつくった人工的な磁器粘土。

つまり、“伸びやすいようにカスタムされた磁器”。そりゃあ簡単にロクロでも伸びますよ。

でもそれをもって「磁器は簡単!」と言い切るのは……うーん、なんかモヤモヤする。。。

 

YouTubeを眺めながら、気持ちはどこか釈然としない。。。。

 

そしてそっとチャンネルを閉じて、音楽に切り替える・・

今度はバイオリンソロにしようか・・・それともメタルがいいか・・・・はたまたメタルか・・・

 

まぁ、陶芸界の“ロクロ界あるある”として、心の引き出しにそっとしまい作陶を再開します。。。