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幼少の記憶から生まれた白磁

これまでも私は、ブログを通してその時々に感じていることや作品に込める想いを綴ってきました。

自己分析のような文章が多く、一見するとテーマが移り変わっているように見えるかもしれません。

でも、振り返るとその変化こそが私自身の表現の核に近づいていくプロセスだったのだと思います。

ということで、さらに整理して脳内自己分析をしてみる・・・

 

原点は幼少のころ。

 

父から磁器粘土をもらって遊んでいたとき、その白さと滑らかさに心を奪われました。

さらに「この粘土は、もともとは石なんだよ」と言って父が見せてくれた磁器の原石。

真っ白でゴツゴツとし、荒々しいエネルギーを放つその姿に、大きな衝撃を受けました。

 

私はそこで、ひとつの素材が「滑らかさ」と「力強さ」という相反する表情を持つことを

子供ながらに何となく知ったのだと思います。

 

そこから私は白磁に魅せられ、探究を深めていきました。

黒田泰蔵氏の作品との出会いは、白磁の可能性を再認識する大きなきっかけでした。
さらに「釉薬さえも磁器素材でつくり出す」という、前例のない挑戦もしました。
素材そのものの純粋さを突き詰めたいという想いが、私を突き動かしていたのです。

 

そうしてたどり着いたのが、クラシック音楽のように優雅で静寂を湛えた白磁作品でした。
滑らかで、凛とした気配を放ち、観る人を癒し、静けさへと導く作品たち。
私にとっては、幼少のころに粘土の白さや滑らかさに惹かれた感覚が形になったものだといえます。

 

そして近年、もうひとつの軸に行き着きました。
ヘヴィメタルのように破壊的で衝動的、圧倒的なエネルギーを放つ作品です。
これは幼少のころに見た原石のゴツゴツとした姿、荒々しさからつながっているもの。

(実際には、この世界に入って、何度も訪れた天草陶石の脈を観てから想いが明確になったと思う)

庄村久喜が作り出すぐい呑:磁器のペーストを纏わせ、さらに青白磁をかけた作品。氷解をイメージしている
                        ぐい呑-纏うカタチ-

 

今回広島の個展にてご紹介する ぐい呑-纏うカタチ- です。
ロクロで成形後、磁器ペーストを纏わせ、その上から青白磁釉薬をかけた作品で、氷が解けていく瞬間をイメージしています。
氷解の儚さと、そこに宿る荒々しいエネルギー。まさに私が「ヘヴィメタ作品」と呼ぶ表現のひとつです。

制作の順番でいえば、まずはクラシック作品に行き着き、そこからさらに掘り下げて、

最近ヘヴィメタ的な作品へとたどり着きました。
二つの表現は一見正反対に見えますが、どちらも幼少期の記憶から芽生えたものであり、私という存在を映し出す両面です。

 

 

これまでもブログで自己分析を重ねてきましたが、

今回ようやく「なぜ自分が白磁に魅せられ続けてきたのか」をより深く言葉にできた気がします。
クラシックとヘヴィメタ――二つの音楽を響かせるように、私はこれからも白磁で自分自身を表現し続けていくでしょう。

 

白の世界

庄村久喜 作陶展

会期:2025年8月26日㈫~9月1日㈪ ※最終日は午後4時閉場

会場:そごう広島店8階=美術画廊

庄村久喜在廊予定日;8月30日㈯、31日㈰、9月1日㈪