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白磁の器が料理を引き立てる理由|作家性と実用性を備えた陶芸作家の器

           磁の鉢:くろの痕跡と静かな緊張感を宿した白磁の器 
           磁の鉢:くろの痕跡と静かな緊張感を宿した白磁の器 

 

 

 

器をつくるとき、私はいつも、ただ整った形を目指しているわけではない。
どこに手が入り、どこに力がかかり、どこに素材の緊張が立ち上がるか。

そうした痕跡まで含めて、形にしたいと思っている。

 

この器の外側には、ろくろの高速回転の中で爪を立て、薄く伸ばしていった跡がそのまま残されている。
それは単なる装飾ではない。
土ではなく磁器という、張り詰めた素材に向き合いながら生まれた、動きの記録でもある。
均質に整えすぎれば消えてしまうものを、あえて残す。そこに、この器の骨格がある。

 

さらにこの器は、ろくろで挽いた円のまま終わらない。
成形後に手を加え、三角形へと静かに歪めていく。
回転の中で生まれた流れと、その後に加える意志。
その二つが重なることで、やわらかさの中に緊張感が宿る。

 

この器が私の中で特に作家性の高い器である理由は、まさにそこにある。
ろくろの技術だけでもない。造形だけでもない。
工程の中で重ねた判断そのものが、この器の表情になっている。

 

一方で、私は器を、眺めるだけのものにしたいわけではない。
料理が盛られて初めて立ち上がる美しさがある。

 

この器には、料理をもう一段階おいしく見せるための形がある。
わずかに緊張した立ち上がり、流れるような輪郭、そして光の受け方。
盛りつけたとき、料理が単に「載る」のではなく、すっと引き上がって見える。
料理と器が張り合うのではなく、器が一歩引きながら、全体の格を整える。
その役割は、派手ではないが、現場ではとても強い。

 

釉薬もまた、この器の大事な要素の一つだ。
全体を包むのは、シルクのような静かな光沢。
やわらかく、なめらかで、触れたときにも視線を向けたときにも、

過度に主張しない品がある。

 

そして口まわりには、光沢の異なるきらめきがそっと忍ばせてある。
それは正面から見てすぐに分かるものではない。
器の角度や、見る人の目線によって、ふと「ん?」と気づく程度のものだ。

 

けれど、その小さな違和感が、器をただの白では終わらせない。
沈黙の中に、もう一つ層をつくる。

私はそういう、声高ではないが確かに残る表現を大事にしたいと思っている。

 

そして、どれだけ表現を込めても、器である以上、使えなければ意味がない。

汚れに強く、食洗機も使え、漂白にも耐える。

日々の扱いに神経をすり減らさなくていいことは、器にとって非常に大きな価値だ。

 

美しいが扱いにくい器は、結局、暮らしや現場から遠ざかっていく。

その点でこの器は、表現を持ちながら、同時に実務にも耐える。

実際にプロの現場で信頼を得て、ミシュラン の店でも使われているのは、

見た目だけでなく、その強さがあるからだと思う。

 

私は、作家性と実用性は、本来べつべつのものではないと考えている。
表現のために使いにくくなるのは浅いし、使いやすさのために無難になるのも弱い。
本当に強い器は、その両方を持つ。

 

手の跡や造形の意志がありながら、料理を受け止め、現場に応え、繰り返し使われる。
この器は、そのバランスを探りながら生まれた。

 

 

使う人にとっては、頼れる器であること。
見る人にとっては、ただの器では終わらないこと。
その両方を、白磁という静かな素材の中で成立させたい。
この器は、そのための一つの答えだと思っている。