
器をつくっていると、不思議なことがあります。
最初から強い意味を込めてつくったわけではなかったものが、
使ってくださる方の言葉によって、あとから意味を持ちはじめることがあります。
この白磁のカップも、そんな器でした。
形はとてもシンプルです。
ろくろの強い造形を見せるわけでもなく、一目で「作家物」と分かるような派手な個性があるわけでもありません。
むしろ、とても静かなカップです。
だから最初は、もっと作家性を強く出した方がよいのではないか、と迷ったこともありました。
けれど、実際に使ってみると、この形には素直な心地よさがありました。
手に持った時の軽さ。
口元に運んだ時の自然さ。
飲み物を入れた時の見え方。
そして、口当たりの良さ。
そこに、自分の作品にも使っている、シルクのような光沢を持つ白磁釉を掛けています。
光を受けると、静かに表情が変わる。
つるりとしているのに、どこか柔らかさを感じる白です。
ある時、お客様から印象的な言葉をいただきました。
「このカップでビールを飲むと、泡がきめ細かく感じるんです。」
最初は半信半疑でした。
ビールの泡まで狙ってつくったわけではありません。
……というか、そんなものを狙ってつくれたら、自分でも驚きます(笑)。
けれど、その後も別のお客様から、
「泡が柔らかい」
「口当たりが気持ちいい」
「ビールがおいしく感じる」
そんな声をいくつもいただくようになりました。
今年の有田陶器市でも、以前このカップを購入された方が、同じものを探しに来てくださいました。
泡や口当たりの感覚を気に入ってくださったそうです。
もちろん、科学的に証明されているわけではありません。
ただ、卵の殻のようにすべすべとした白磁の質感が、泡のやわらかさや、口当たりの心地よさにつながっているのかもしれません。

さらに、あるお客様から、
「冷凍庫で10分ほど冷やして使うと、すごく気持ちいい」
という声もいただきました。
実際に試してみると、冷えた白磁を手にした瞬間、カップそのものが冷たさをまとっているように感じました。
一般的な磁器以上に冷たさが際立つのは、この白磁ならではなのかもしれません。
水を入れて飲むだけでも、不思議とおいしく感じられます。
これは、単なる機能の話ではないと思っています。
冷えた白磁の感触。
口元に触れるやわらかさ。
白いカップの中で光る飲み物。
その一連の体験が、一杯の時間を少し豊かにしてくれる。
このカップは、強く主張する白磁ではありません。
けれど、生活の中で手に取り、使い、感じることで、静かに残っていく白磁です。
「冷やして楽しむ白磁カップ」
日常の一杯を、少しだけ美しくするためのカップです。
※作品は、自宅ギャラリーおよび個展にて販売しております。
ご興味をお持ちいただけましたら、メールにてお気軽にお問い合わせください。

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