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熊本で「静と動」を展示して

          静けさの中に、力をとどめる白
          静けさの中に、力をとどめる白

 

熊本・鶴屋百貨店での個展が、無事に終了いたしました。

猛暑の中、会場まで足を運んでくださった皆様、作品をご覧くださった皆様、

そして開催に力を尽くしてくださった関係者の皆様に心より御礼申し上げます。

 

今回は、私にとって一つの節目となる個展でした。

 

これまで制作してきた、静けさの中に力をとどめる作品。

そして、素材の持つ力を、衝動のままに解き放つように生まれた作品。

私の中で「静」と「動」と呼んでいる二つの表現を、初めて一つの会場で、まとまった形として展示しました。

 

同じ白磁でありながら、その姿も、表情も、そこから伝わる空気も大きく異なります。

 

静かに佇み、見る人の心へゆっくりと入り込んでいくもの。

一方で、一目見た瞬間に、その造形や質感が強く迫ってくるもの。

 

異なる二つの表現ではありますが、どちらも私自身の中から生まれた、偽りのない白です。

 

今回、熊本の地元テレビ局三社、そして新聞社にも取材していただきました。

作品についてはもちろん、その作品のもととなる白磁の素材が、熊本の天草陶石から生まれていることにも、大きな関心を寄せてくださいました。

 

天草の地から掘り出された陶石が砕かれ、土となり、私の手を通して形となり、炎を経て作品になる。

私が作品をつくるということは、素材に新しい姿を与えると同時に、その中に眠っている力を目覚めさせる仕事なのかもしれません。

 

今回の個展で、特に心に残った出会いがありました。

 

その方は、もともと個展を目的に鶴屋百貨店へ来られたのではなく、別の用事で、たまたま会場の前を通りかかられた方でした。

最近、身近にご不幸があり、気持ちがふさぎ込んでおられたそうです。

そんな中、偶然、私の作品が目に留まったそうです。

 

シルクのような白の光沢が持つやさしさ。

そして、ゆったりとした柔らかなフォルム。

 

その二つが心の中で響き合い、作品を見ているうちに穏やかな気持ちになられたと話してくださいました。

そして、その作品を心から大切に思い、お迎えいただくこととなりました。

 

この出会いにて、私は作り手として、胸に迫るものがありました。

 

作品は、言葉を発することはありません。

悲しみを消すことも、人生を変えることもできないかもしれません。

けれど、誰かの心が疲れているとき、そっと寄り添い、ほんの少しだけ呼吸を穏やかにすることはできる。

作品には、そのような力があるのだと、あらためて教えていただいた出来事でした。

 

個展は、作品を並べ、販売するだけの場所ではありません。

作品を通して人と人とが出会い、言葉を交わし、ときには思いもよらない形で、誰かの心に触れる場所でもあります。

これまで作品をご覧くださってきた方々との再会があり、初めて私の作品に触れてくださる方々との出会いもありました。

 

作品の前で足を止め、じっくりと見てくださる姿。

「同じ作家がつくった作品とは思えない」と驚かれる言葉。

静と動、それぞれの作品に寄せられた率直な感想。

 

その一つひとつが、これから制作を続けていく私にとって、大きな力となりました。

 

静けさの中に、力をとどめる白。

衝動のままに、力を解き放つ白。

 

今回の熊本での個展を通して、この二つの表現を続けてきたことは間違いではなかったと、あらためて感じています。

そしてこれからも、この二つの白を、より深く、より強いものへと育てていきたいと思います。

 

次回の個展は、十月、大阪で開催いたします。

 

関西の皆様にも、ぜひ実際に作品の前に立ち、「静」と「動」、それぞれの白が持つ空気を感じていただきたいと思っています。

 

熊本でいただいた多くの出会いと励ましを胸に、再び制作の日々へ戻ります。

あらためまして、今回の個展に関わってくださったすべての皆様に、心より感謝申し上げます。

 

本当にありがとうございました。

 

           衝動のままに、力を解き放つ白
           衝動のままに、力を解き放つ白